桜がほぼ満開です。菊の季節じゃないですよ。桜の季節です。
前の文章を書いてから7年ほど経ったようですね。
今朝、「たまにはここに書いてみよう」と思い立ったときには、7年も経っていたとは自覚していませんでした。ということで、書こうと思っていたことをかなり白紙に戻し、7年前からのことを思い起こしながら書いてみようと思います。
国内的、我々の分野的には、大洪水の頻発が最大の出来事であったといえましょう。もちろん以前から、中小洪水はぽつぽつありました。毎年ありました。が、世の中を騒がせるような水災害がほぼ毎年生じるようになったのは、2011年からのようです(ここでは津波・高潮は除いていますので、東日本大震災のことではなく、その年の近畿の水害からという意味です。ちなみに2011はタイで大洪水があった年でもあります)。2011年からは、毎年、と言っても構わないかと思います。
我々にとって最新最大である令和の台風は、東日本にとって、カスリーン台風以来のものであったといえます。つまり、70-80年に一度というところです。必ず70-80年毎に来るわけでもないのですが、来年また来る可能性だってあるわけですが、仮に70-80年後に次のが来るとすると、温暖化の影響は益々明らかでしょうから、(もし何も手を打たなかったら)どうなってしまうのでしょうか。多摩川も堤防まであと1mとかだったわけですし。
洪水の際にテレビに出演したり、新聞に一言が載ったりすることもありました。私よりも適切な方が多数いらっしゃると思うのですが、実際、私に最初に声がかかるわけでもないのですが、「あなたが断って、もっとひどい人に回ったら、...ということも想像してみたら」という教えもあり、そこそこ出演するようにはしています。まあでも、テレビの録画取材はダメですね。向こうが勝手に、テレビ局にとって都合のよりセリフだけを切り刻んで取り出します。
脈絡なく上からの連想だけで書きますと、テレビ→Youtubeというのが、この7年の大きな流れでした。
ZoomやTeamsを使っての講義や会議は、自分がYoutuberになったような気持ちになりますし、Youtuberはさておき、オンライン会議がコロナ下で一気に進んだのも、この7年の一部でした(というより、この1年の出来事ですね)。
世界的には、トランプ政権の数年だったといえましょう。
利己的であるべし、というのが、世界でも日本でも当然のFirst Priorityとなってきました。学術の世界にいると、そうではない=利他的を第一とするような人々にも国内外で多々お会いします。土木の河川分野でお会いする実務の方々の多くも利他的です。そういった世界とニュースで見るような利己的な世界とは、頭の中でなかなか感覚的に一致してこなかったりします。
研究面では、この7年、水分野の地球温暖化影響評価研究(←漢字長いね!)が隆盛したこともあり、ものすごく自分の名の入った論文の被引用数が伸びました。
単にその続きをやっていれば楽なのでしょうが、楽(らく)=楽しいではないので、楽しむために、何か新しいことにチャレンジしたいと思っています。
とはいえ、自分がやるわけではないので、若者(研究室学生)に、古臭くなく、興味深い、新時代指向のテーマを提案したいと考えています。いやまあ実は、若者のほうが古臭いテーマを希望しがちだったりするのですよね。なんとかそれをぶち壊しつつ進みたいと考えています。
直接、研究に利用できるかは、やってみないと分かりませんが、ここ数日、GANと転移学習と強化学習(and Transformerなども(2022Apr追記))について学んでいます。この7年で最も進んだ、もっともエキサイティングな分野は、これら以外にありえないと思っています。こういうのは、ウィーナーのサイバネティクス以来なんですかね。そう考えると、たとえばノーベル賞なんてのも古い枠組みだということですね(取られた研究自体は素晴らしいのでしょうが、限定的には該当しない分野が多すぎるようになりました。ヒントンもデニス・ハサビスも分野外なわけですから。あ、あと、そういう分野を勉強していると、日本が全然、科学先進国でないことに気付かされます。日本の大学も、どーんと分野を動かせばよかったのでしょうけどね(首相までもがそういうことを言い出したようです、2022April)...法学部、経済学部、文学部、農学部とかが古い体制のままで大きすぎましたね。工学部も古い分野を残しすぎたといえましょう。今でも東京の高校生の主たる進学先は法・経・文なんじゃないかな....それじゃ国際競争力は難しいでしょうね。)
これまた脈絡なく上からの連想で書くと、Natureが最近、Ten computer codes that transformed science という記事を出していました。
タイトルだけ見て、1位は何かな?....なんとびっくり、(といっても1位じゃなくて、時代的に最初ということのようですが)、まずFortran!。次がFFT(私はあまり詳しくありませんが)。4番目に1969ということで気候モデル=GCM!(Manabeさんの論文ということで1969のようです)。これまでの我々の研究は、結局のところGCMの一部といえますよね、この流れで書くと。それを活かしつつも、やっぱり、単なる継続ではなく、次の時代の何かを楽しみたいと考えています。
(ちなみに、1-10位の投票もあったようで、あくまで投票ですが1位はFortranでした。)
10個の中には、iPythonと、AlexNet(ディープラーニングですね)も入っています。
その流れで書くと、研究室訪問の学生に「この研究室では何を研究してますか?」と訊かれるのが、結構な難問。こちらとしては新所属の学生と何かとんでもなく新しいことをしてみたいと思っているわけで。「何を研究してますか?」=「僕、私の卒論、修論は?」なのですが、「それはこれから一緒に考えるんだよ~」っていうことなので。
これまでに所属してくれた and 今いる学生の方々は、きっと、そのあたりを察した人ばかりなのでしょう。
一応、この7年の職務上のことも書いておくと、
- 本学の教育改革(という名の組織改編)の学科カリキュラム絡みを、教育改革前から後まで
- 水文・水資源学会の国内誌の編集委員長(2018秋から2020秋)
- 水工学論文集の編集幹事長(2019春から2021春)
- 水工学委員会の水文部会長(2021初夏から2023初夏の予定)
- 水文・水資源学会の総務委員長(2020秋から2022秋の予定)
これらで一応、国内の学会の最低限のお勤めは果たせるはず、というところです。
国際的にはHSJのAssociate Editorを6年+αで任期満了、ERLについては4-5年経っても「おめでとう、もう2年やってね」という感じで継続中、です。
- 本学の全学的な動きの中では、未来社会デザイン機構(DLab)というものにも参加させていただきました。あ、これの大学院授業を来年度は担当せねばならないのだったっけ。
論文でいえば、国際的には論文数爆発的な時代になって、これからどうなっちゃうのでしょうか。
このまとまりのないモノローグも、あとひとつ、最近の話題を書いて終わりにしようと思います。
ユネスコにIHPというのがあるのですが、次期プラン=2022-2029のプラン(IHP IX)を作るのを少しだけお手伝いさせていただいています。IHPは、Intergovernmental(ちょっと前までInternational) Hydrological Programmeとかで、過去50年ほど続いてきているユネスコの(すなわち、科学と教育に関わる国連の)水資源や水循環に関わるプログラムです。プログラムといっても、コンピュータのプログラムのことではありません。国際的な集まり、動きのことですね。
ユネスコが直で扱っているプログラム的なものとして、代表的なものが3つあるらしく、このIHP(水、川に関するもの)と、海に関わるもの(名前はなんとIOC)、あと陸の生態系に関わるものです。ユネスコは、その第一の目標が「平和」なのですが、世界の国が揉めるのは、海で揉める(海上の国境とか)か、陸の土地で揉めるか、各国を貫いて流れる川(国際河川と言います)で揉めるか、だからということなのでしょう。きっと。科学・教育活動を通して、揉めそうなところで平和を希求する、ということなのでしょう。
科学者的にはなんでもオープンに、平等にして、平和を希求したいところですが、最終的には各国がapproveせねばならず、たとえば「データは各国それぞれのもの。オープンにするなど、断じてならん」などという意見を出す国もあったりで、まだ揉めています(IHPのウェブサイトに全部、資料が載っているので、内情の暴露ではありません。オープンにわかることです。)。これからは自然にやさしく、各国協調で仲良く、というような意見もある一方で、まだまだ発展したい、資源収奪・開発welcome、という意見もあります。我が国、我が地域が有利になるように、という我田引水の意見も多くみられます。国際政治(?)って、なかなか大変ですね。でも、これももうすぐ決着のはずです。どういう決着となるのでしょうか....一年以内には決着がつくはずなのですが。パリに4回ぐらい行けるはずだったのが、コロナのせいで2回だけになったのは、少し残念。
あ、そうそう、ユネスコの学食(?)って、目の前まっすぐに、どーんと大きくエッフェル塔が見えるのです。すごいね。でも料理は、デザート以外おいしくなかったりします。
最後に一言追記、研究室訪問で「この研究室は水理学とかの研究をしていますよね?」というのは大外れです。
東京科学大学 環境・社会理工学院 土木・環境工学系 鼎研究室
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