地球温暖化による極端豪雨に関する研究(伊豆大島への大雨の例)

2016年度修士 武川 晋也


近年地球温暖化によって雨の降り方が局地化・集中化・激甚化していると言われる。これらの豪雨による被害を回避・軽減するためには、地域特性に応じて精緻な気候予測や効果的な対策を実施することが必要である。鼎研究室では、SI-CAT(Social Implementation Program on Climate Change Adaptation Technology, 気候変動適応技術社会実装プログラム)の援助も受け、日本全国の地方自治体等が行う気候変動対応策の検討・策定に汎用的に生かされるような近未来の極端豪雨シナリオを作成する方法の構築を目指している。

 

【日本における豪雨と台風の経路パターンとの関係の分析】

台風による豪雨は洪水や土砂災害を引き起こし、社会に甚大な被害をもたらしうる。これらの被害の規模に影響する重要な因子の一つとして台風の経路が挙げられる。しかし、台風の経路データは発生位置・途中ルート・消滅位置などからなる多変量なデータであるため、豪雨と台風経路の特徴との関係を把握することは困難であった。そこで本研究では、まず多変量データのパターン抽出に適した自己組織化マップを用いて、1951-2014年に北西太平洋で観測された台風を20の経路パターン(ノード)に分類した。次に全国から選択された各観測地点での台風由来の降水量の割合とその中でのノード別の割合を計算した。さらに、地点ごとに日降水量の上位3事例を抽出し、各事例に対して台風のノードや前線といった豪雨の要因も調査することで、豪雨と台風経路との関係を分析した。その結果、特定の台風のノードと前線が組み合わさったものや前線のみのものなど、地点ごとに主要な豪雨の要因が異なり、豪雨をもたらす台風の経路パターンも大きく異なることが示された(以下の図は伊豆大島での結果を示す。)。今後は、地点ごとの詳細な解析を進めていく予定である。