全球氷河モデル開発に向けた全球デブリ分布の検出
博士2年 佐々木 織江
氷河は、雨季に雪から氷を蓄え、ゆっくりと下流に流れ、その融解水を河川に流すため、下流地域にとって、大切な水資源のひとつとなっています。しかしながら、地球温暖化の影響により、世界中に存在するほぼ全ての氷河は、21世紀を通して減少を続けると予測されています。
氷河の影響が私たちの生活に与える影響は大きく、例えば、気温上昇に伴う一時的な融解水の増加は、氷河湖決壊洪水や土砂崩れの原因となります。さらに長期的には、氷河が小さくなることにより融解水が減少し、下流地域で得られる水資源の量を低下させます。また、氷河融解水が流出することにより、海水面上昇の原因となることや、氷河湖の数と規模を拡大させることも指摘されており、氷河の融解水の将来予測は、
地球の水循環を考える上で、とても大切な研究課題です。
海面上昇の予測には、全球規模で氷河融解をモデリングする必要がありますが、世界的にも全球氷河モデルの開発は未だ発展途上の分野です。そこで本研究では、高性能かつ高解像度の全球氷河モデル開発を目標としています。
一方で、氷河の融解は、氷河表面に存在するデブリ(土砂や岩屑)に大きく左右されることが知られています。それゆえ、正確な融解量予測のためには、氷河モデルにデブリの影響を組み込む必要がありますが、全球でデブリの位置や厚さに関する情報が整備されたデータセットは存在しません。
それゆえ、本研究では、まず、デブリの影響を全球モデルに反映させるため、人工衛星Terraに搭載された2種類のセンサー(ASTER, CERES)による5年分の観測結果と、同期間の気候データ(再解析データ)を用いて、デブリの位置と厚さに関するデータセットを作成しました。
この結果は、全球氷河モデル作成のための大切な基礎情報であり、このデータを用いて全球氷河モデルを作成することにより、地球の水循環に氷河が与える影響をより正確に予測することができると考えています。
東京科学大学 環境・社会理工学院 土木・環境工学系 鼎研究室
〒152-8550 東京都目黒区大岡山2-12-1-W6-6
Kanae Laboratory
Department of Civil and Environmental Engineering
School of Environment and Society
Institute of Science Tokyo
2-12-1-W6-6, O-okayama, Meguro-ku, Tokyo 152-8550, Japan